鹿児島地方裁判所 昭和46年(行ウ)4号 判決 1974年12月27日
鹿児島県日置郡伊集院町下谷口一、八二二番地
原告
翁祖池
右訴訟代理人弁護士
小掘清直
同
亀田徳一郎
被告
伊集院税務署長
高野虎雄
右指定代理人
林田慧
同
愛甲浦志
同
清水昭二
同
浜田国治
同
宮田正敏
同
村上悦雄
右当事者間の昭和四六年(行ウ)第四号所得税査定金額に対する更正決定変更請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
一 被告が原告の昭和四三年分の所得税について、昭和四五年六月二五日なした更正処分のうち、国税不服審判所長の裁決により維持された部分のうち、総所得額一四三万〇二一九円を超える部分に対する課税処分を取消す。
二 原告その余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを三分し その一を原告の、その二を被告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が原告の昭和四三年分の所得税について、昭和四五年六月二五日なした更正処分のうちの、国税不服審判所長の裁決により維持された部分のうち、総所得額一〇一万一、〇九九円を超える部分に対する課税処分を取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者間に争いのない事実
一 原告は飲食店を営なむものであるが、昭和四三年分の確定所得申告をしたところ、これに対し被告が昭和四五年六月二五日、原告の総所得金額を二一五万一、四九〇円とする更正処分(以下「本件更正処分」という)をなした。そこで、原告は被告に対し異議の申立をしたが、被告が、これを棄却する旨の決定をしたので、原告は国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ、同所長は昭和四六年六月三〇日本件更正処分の一部を取消し、別紙のとおり、原告の総所得金額を二一五万〇、二一九円とし、本件更正処分のうち右金額を超える総所得金額に対する部分のみを取消す旨の裁決をした。
二 右裁決によつて維持された本件更正処分の根拠は、次のとおりである。
1 原告には、その事業にかかる昭和四三年の収入支出について、これを知る継続的かつ組織的な帳簿がなく、また原始記録等の保存も十分でなかつたので、被告は、原告の事業所得金額について、収支計算により算定することができず、やむを得ず、資産負債の増減方法により算定した。
2 右資産負債の増減方法による事業所得の算定は、事業に関係のある期首、期末の資産負債のあり高を調査して、その増減の差額により差引増減額を算出し、これに調整項目の金額を加算、減算して事業所得金額を算定するものである。しかして、右調整項目の金額を加算、減算する理由は次のとおりである。すなわち、単に期首、期末の資産負債の差引増減額を算出したのみでは、実際の事業所得は把握できない。けだし、事業所得たる資金を、事業所得計算上の必要経費に算入されない支出(たとえば生活費、所得税等)にあてた場合には、事業の元入金(資本)の引出しとしてその支出額だけは事業用資産が減少しているのであるから、事業所得の算出にあたつては、これを資産負債の差引増減額に加算しなければならない。一方、これと反対に、事業とは何ら関係のない収入、つまり、事業所得計算上の収入金額に算入されない収入(たとえば仕送り金、持参金等)があつた場合には、これを事業所得とすることはできない。そこで、若し、これらの収入が事業用資産に変化しておれば、これは事業に対する元入であるから、その分については資産負債の差引増減額から控除しなければならないのである。
3 原告の昭和四三年一月一日(以下「期首」という)現在および同年一二月三一日(以下「期末」という)現在の資産、負債のあり高を調査し、資産の増加額一二四万八、〇三四円(別紙の<A>の金額)に負債の減少額七万七、二〇〇円(別紙の<B>の金額)を加算した一三二万五、二三四円(純財産増加額、別紙の<C>の金額)に、更に、生活費等の合計一六七万六、二六一円(別紙の<D>の金額)を加算し、預金利子等の合計三五万四、〇三一円(別紙の<E>の金額)を減算した金額二六四万七、四六四円から事業専従者控除額四五万円を減算した金額二一九万七、四六四円が原告の事業所得の金額である。また、原告は昭和四三年一月に原告所有の普通乗用車を鹿児島トヨタ株式会社に売却しており、その下取価額二四万円から当該車両の未償却残高二八万七、二四五円を差引いた赤字の四万七、二四五円が原告の譲渡所得計算上生じた損失の額である。従つて、原告の昭和四三年分の総所得金額は、右事業所得金額二一九万七、四六四円から譲渡損の額四万七、二四五円を差引いた二一五万〇、二一九円となる。
第三争点
一 原告の主張
1 生活費について
別紙の調整項目の加算の部中の生活費の算定は、生活保護法により厚生大臣の定める保護基準額である四六万一、六八〇円をもつて、原告の生活費とすべきである。けだし、生活保護法に基く保護基準額が憲法にいう文化的で最低限度の生活をも保障しえないものであり、その基準額を大幅にあげよということはかねがね国民の要求しているところであるが、国が自ら支出する場合はこの最低基準を国民に押しつけている以上、国が収入する立場に立つ場合もこの基準によるべきであつて、国がその都合により、その場その場で最低基準や平均基準を適宜国民に押しつけるのは御都合主義であり、虫がよすぎる。国は自制すべきである。従つて、被告が原告の生活費として八八万〇、八〇〇円を加算したうち、前記の四六万一、六八〇円を超える四一万九、一二〇円は過大である。
2 未収金債権について
原告は、昭和四二年一二月宇都鉄男に対し、原告が所有していた鹿児島県日置郡伊集院町の家屋(以下「本件家屋」という)を代金八〇万円で売渡し、内金八万円は同月受領したが、残金七二万円は昭和四三年一月に受領した。従つて、原告は期首の時点で、宇都鉄男に対し七二万円の売買残代金債権を有していたのであるから、右債権を期首における資産として計上すべきであるにかかわらず、被告はこれを計上していない。
3 以上により、本件更正処分のうちの裁決によつて維持された原告の総所得金額二一五万〇、二一九円は、右1の四一万九、一二〇円および2の七二万円の合計一一三万九、一二〇円過大な算定であるから、これを減額すると、原告の総所得金額は一〇一万一、〇九九円となるので、右金額を超える部分に対する課税処分の取消を求める。
二 被告の主張
1 生活費について
(一) 被告は、原告の生活費の算定については、原告の生活の水準を通常の社会人のそれに置いて計算することが合理的であると判断して、家計調査年報(総理府統計局作成)および統計月報(熊本国税局調査統計課作成)に基づいて計算したのである。すなわち、右家計調査年報による一人当り年間生活費二一万一、二一三円と統計月報によると同生活費一五万一、六三三円との平均額一八万一、四〇〇円に地域差等を加味した修正率八〇・九パーセントを乗じて一人当り年間生活費一四万六、八〇〇円を算出し、これに原告の家族数六名を乗じて八八万〇、八〇〇円の生活費の推計を行なつたものであり、原告に、生活費にかかる正確な資料がない以上、被告の右推計方法が最も合理的なものというべきである。
(二) 原告は、生活保護法に基く保護基準額によるべきである旨主張が、到底採用できない。すをわち、生活保護法第一条によれば、「この法律は、日本国憲法第二五条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行ない、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」とあり、さらに同法第三条において、最低生活とは、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」と述べられている。しかしながら、最低生活がこのように規定されているからといつて、直ちに、現在の我国において、最低生活が健康で文化的な水準において営なまれているということにはならず、むしろ最低生活の向上を目指して国として努力しつつあるというべきであろう。生活保護法による基準は、法の目指す将来の理想としては、高水準の生活が望まれるのであろうが、我国の現状としては、それが単なる国の恩恵であるか、保護受給権ともいうべき権利であるかの論議は別として、未だ生活困窮者に対する社会政策の一端として最低の生活を保障する段階にあるとみるべきである。
生活保護法による基準をこのような観点から考えてみると、本件の原告の日常の先活費を算定するに当つて、生活保護法の基準を適用することは、著しく原告の生活の実態と遊離しているというべきである。すなわち、原告は、自己名義の土地を所有し、従業員を使用して事業を経営することにより多額の収益をあげた点からみても、社会人として平均以上の生活を営なんでいることは窺えても、少なくとも、生活保護法の適用を受けなければならない程度の低い生活水準において日常生活が営なまれてきたとは到底いい難い。
2 未収金債権について
原告の未収金債権についての主張は、次の理由により認めることができない。
(一) 原告の主張する売買は、売買契約書を作成した事実が認められないので、八〇万円という売買代金自体が明確でなく、しかも右代金の入金についても、証ひよう書類等がないので、いつ入金したのか明らかでないが、被告の調査によれば、右代金は、昭和四二年中に入金があつたことが推認されるのであつて、昭和四三年になつて入金した事実は認められない。また、原告主張のように、期首に未収があり、昭和四三年中に右未収の七二万円が入金されているとすれば、そのような多額の入金は預金等他の資産に肩がわる等別個な資産の姿で表現されるべきであるにもかかわらず、そのような事実が認められないところからも、原告の右主張は認めることができない。
(二) 仮に、代金八〇万円で売買され、期首に未収金債権があつたとしても、本件家屋は保存登記がなされておらず、ただ単に、固定資産税を原告名義で納付していたにすぎない状態であつて、果して、原告所有の資産であつたか明確でない。また、原告主張の売買代金八〇万円のうちには、本件家屋のみでなく、原告の所有に属していない土地(鹿児島県日置郡伊集院町大字清藤字大宮司一、三二二の八宅地一四五・四五平方メートル。(以下「本件土地」という。)も含まれている。すなわち、本件土地は原告の妻翁蘭英が今村正吉から昭和二八年五月一日売買により取得し、昭和二九年九月二日その所有権移転登記がなされたものであり、その後同人は昭和四二年一二月一〇日に宇都鉄男に売渡し、昭和四三年二月二六日同人に所有権移転登記がなされている。右八〇万円のうち、本件土地および家屋の代金がそれぞれいくらであるか区分はできていないが、少なくとも、売却代金のうち、本件土地分については、原告の資産ではないので、期首の資産に計上すべきいわれはない。
(三) 仮に、本件家屋が原告の所有であり、期首に未収金債権があつたとしても、本件家屋は原告の営業とは全く関係のない個人的生活用に使用していたものであり、その売却代金は事業の所得と目されるものではないので、事業所得算定の基礎となる未収金として計上されるべきものではない。また、昭和四三年中に右未収金債権の入金があつたとしても、これが事業用資産に変化した事実は認められないのであるから、調整項目の減算の部にも計上すべきではない。
(四) そこで、本件土地および建物の売却による所得の取扱いについて説明するならば、宇都鉄男に売却されたのが昭和四二年一二月であるから、この時点をもつて譲渡所得の発生があつたというべきであつて、その売却代金が未収たると否とを問わず、昭和四二年分の譲渡所得となり、昭和四三年分の譲渡所得とはならないのである。従つて、仮に原告主張の如く、期首に七二万円の未収分があつたとしても、これは原告の昭和四三年分所得税の総所得の計算には何ら関係がないものである。
第四証拠関係
一 原告
1 甲第一号証、同第二号証の一および二を提出。証人翁美智子、同宇都鉄男の各証言および原告本人尋問の結果を援用。
2 乙第一号証の一および二、同第二号証の一ないし三、同第四、第五号証の各成立は認める。乙第三号証の成立は不知。
二 被告
1 乙第一号証の一および二、同第二号証の一ないし三、同第三ないし第五号証を提出。証人出田英幸、同宮永元義の各証言を援用。
2 甲号各証の成立は認める。
理由
第一争点についての判断
一 生活費について
原告が中華料理店を経営していること、原告が期首において二三三万二、九九一円の、期末において二八九万九、四六七円の預金(積金を含む)を有していたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証の一および二、証人出田英幸、同宮永元義の各証言および原告本人尋問の結果(後記借用しない部分を除く)を総合すると、昭和四三年当時、原告と生計を一にしていた原告の家族は、原告夫婦、原告の長男夫婦、孫二人の六名であり、原告は昭和四二年一二月ころには鉄骨コンクリート造三階建店舗兼住宅を新築し、同店舗および伊集院駅前の支店でそれぞれ中華料理店を経営し、それによつて家族の生計を維持していたもので、昭和四三年一月二四日には九八万円で乗用車(トヨペツトクラウン)を購入したこと、総理府統計局の家計調査によると、昭和四三年の九州地方における、年収が原告主張の原告の総所得金額を下回る九〇万円以上一〇〇万円未満の全世帯(勤労者の世帯に限らないという意味)の平均の年間収入は九四万三、〇〇〇円、世帯人員数は四・二二人、一箇月の消費支出額は六万〇、八八一円(その内訳は、食料費二万一、二七二円、住居費八、二一三円、光熱費二、六一六円、被服費六、八二八円、雑費二万一、九五二円)であつたことが認められ、右認定を妨げるに足りる証拠はない。
右認定の平均の月間消費支出のうち、支出額が世帯人員数にほぼ比例すると考えられる食料費、被服費、雑費計五万〇、〇五二円の一人当り平均額は一万一、八六〇円となり、支出額が世帯人員数の多少の差にかかわらず、ほぼ固定的であると考えられる住居費、光熱費の計が一万〇、八二九円であることを基礎として、世帯人員数六人の年間消費支出額を算出すると、九八万三、八二一円となる。また、鹿児島県企画部統計課発刊の昭和四四年鹿児島県統計年鑑によると、昭和四三年の鹿児島市における全世帯(勤労者の世帯に限らないという意味)の平均の世帯人員数は四・〇五人、月間消費支出額は五万六、四六〇円(その内訳は、食料費二万〇、一〇二円、住居費七、二四〇円、光熱費二、四三五円、被服費五、六二〇円、雑費二万一、〇六三円)であり、これに基いて、前記と同様に世帯人員数に比例する費用とほぼ固定的費用に区分したうえ、世帯人員数六人の年間消費支出額を算出すると、九四万七、七七二円となる。
右の当事者間に争いのない事実、認定事実、および右の各統計から算出される世帯人員数六人の世帯の年間消費支出金額を綜合して考えると、昭和四三年に要した原告ら六名の家族の生活費は、被告主張の算出方法によつて算定されたという八八万〇、八〇〇円を下らなかつたものと推認することができる。原告本人の供述中には、昭和四三年当時における原告の家族の生活費は、家族全員で月一万円か二万円だつた旨の供述があるが、右供述は前記の各証拠、公刊の統計資料に対比すると措信できず、他に右推認を覆えすに足りる証拠はない。
してみると、被告が、原告の生活費を八八万〇、八〇〇円と算定したことは相当であるということができる。
なお、原告は、生活費の算定は、生活保護法により厚生大臣の定める保護基準(生活扶助基準)額によるべきである旨主張するが、右基準は、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的として、生活に困窮する国民に対し、地域等級別に年令に応じて基準金額を定めたものであつて、原告が生活に困窮する者に該当しない者であることは、前認定の原告の生活状態等に照らして明らかであるから、原告の右主張は採用できない。
二 未収金債権について
成立に争いのない甲第二号証の一および二、証人翁美智子、同宇都鉄男の各証言および原告本人尋問の結果を総合すると、原告は昭和四二年中に、当時原告ら家族の住居として使用していた本件家屋およびその敷地である本件土地を、宇都鉄男の父と交渉のうえ、代金八〇万円で宇都鉄男に売却し、内金八万円を昭和四二年中に受領し、残代金七二万円を昭和四三年一月二二日ころ受領したこと、そして原告は右七二万円を預貯金等することなく、間もなく、新築した店舗での営業のための冷蔵庫、鍋、釜等の什器備品類の購入代金に充てたことを認めることができる。成立に争いのない乙第四号証の記載と証人出田英幸の証言とによつて、松崎謙一および右証人によつて作成されたと認められる乙第三号証、成立に争いのない乙第四、第五号証、証人出田英幸、同宮永元義、同翁美智子の各証言を総合すると、原告の長男の妻である翁美智子は、本件更正処分に関して税務担当職員から調査を受けた際に、本件家屋および土地代金は昭和四二年中に全額支払われた旨、また翁蘭英(原告の妻)が同旨のことを言つていた旨を述べたことが認められるが、証人翁美智子の証言によると、右供述は、当時の翁蘭英の一応の記憶に基いて述べたものであることが認められ、前掲記の甲第二号証の一、二、証人宇都鉄男の証言によると、右記憶が誤つていることが認められるから、翁美智子が右供述したことは前記認定を覆すに足りず、他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
前記認定した事実によると、原告は期首において、宇都鉄男に対し、本件土地、家屋の売買残代金七二万円の未収金債権を有していたことは明らかである。
ところで、被告は、本件土地および家屋は、その所有者が原告であるとの確証がないばかりでなく、本件土地は原告の妻の名義に登記されていて、同女の所有であり、また本件土地および家屋はもつばら居住用に使用されていたもので、原告の事業とは関係のない資産であつたから、前記未収金債権は事業所得の算定についての資産に算入すべきではないと主張する。
しかしながら、証人出田英幸の証言によると、原告が本件更正処分に対する異議の申立をした当時においては、本件土地および家屋の売買代金債権は、その支払いがなされた時期によつては、資産として計上される建前の下に調査がなされていたことが認められ、また、成立に争いのない甲第一号証(裁決書謄本)によると、別紙に記載の資産中の定期預金中には、原告名義ではない翁桃子名義の定期預金が含まれていること、普通乗用車であるトヨペツトクラウンを車両運搬具として資産中に計上していることが認められるのであつて、これらの事実に照らすと、右被告の主張は、簿記会計学上の純理論としては兎もかく、実際の税務処理上の取扱方法としては、直ちには納得し難いものがあるが、この点は暫く置き、仮に、右被告の主張を是認するとしても、前記認定のとおり、原告は、昭和四三年一月二二日ころ右未収金債権七二万円の弁済を受け、これをその後間もなく、冷蔵庫等営業用の資産等の購入代金の支払いに充てたものであるから、右七二万円については、これを未収金債権として期首資産に計上しない以上は、調整項目中の減算の部に計上すべきであるといわざるを得ない。
してみると、右の計上をしていない本件更正処分のうちの、裁決で維持された原告の総所得金額を二一五万〇、二一九円とする課税処分のうち、右金額から七二万円を減じた総所得額一四三万〇、二一九円を超える部分に対する課税処分は違法というべきである。
三 結論
以上述べたところにより、原告の本訴請求は、総所得額一四三万〇、二一九円を超える部分に対する課税処分の取消を求める限度において理由があるので、右の限度においてこれを認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 寺井忠 裁判官 出嵜正清 裁判官 坂主勉)
資産負債増減表
<省略>